ノベルティソングの女王

この記事は1年前の西野亮廣エンタメ研究所の記事です。
2018年6月5日

先日の『ノベルティ』に関する投稿に対して、「なぜ、ノベルティ○○の方が作家性が浮き彫りになるのですか?」と質問を受けたので、分かりやすく具体例をあげますね。

僕、ノベルティソングの女王は中島みゆきサンだと思ってるんだけど、『Dr.コトー診療所』の主題歌に使われていた『銀の龍の背に乗って』という曲、知ってる?

「これぞ、中島みゆき!」な曲なんだけど、注目すべきは“歌詞”ね。

この曲の歌詞の凄まじさ(中島みゆきの天才っぷり)を知る上で、まずは、『Dr.コトー診療所』のストーリー設定を知っておく必要があるんだけれど、主人公は、その昔、都内の大学病院で重大な医療ミスをして、流れ流れて、海を渡り、孤島の診療所に勤めることになる。

つまり、主人公が島の人達と触れ合いながら“過去の失敗から立ち直っていく”ストーリーなわけだ。

さて、あなたなら、どんな歌詞をつける?

「前を向いていこう」

「あの日の失敗を『失敗』で終わらせない」

とか何とか、その辺りだと思う。

これに対して中島みゆき大先生は、歌詞に出てくる「自分」を「まだ飛べない雛みたいに非力だ」とした上で、

「急げ悲しみ 翼に変われ

急げ傷跡 羅針盤になれ」

と表現した。

「傷跡」が「羅針盤」になるという天才性よ!

中島みゆき大先生以外に、誰が書けるんだよ、こんな歌詞。

んでもって、極めつけはサビの…

「銀の龍の背に乗って 届けに行こう命の砂漠へ

銀の龍の背に乗って 運んで行こう雨雲の渦を」

なんだかカッコイイけど、『銀の龍』って何?

これ、気になるよね?

この『銀の龍』の正体について、中島みゆき大先生はインタビューで答えてるのよ。

「船で島に渡る時に、航跡で白波が立つじゃない。あれよ。」

つまり、これが決定打なんだけど…

もともと存在していた曲を『Dr.コトー診療所』の主題歌にしたわけじゃなくて、

『Dr.コトー診療所』のストーリーを受けて作った完全ノベルティソングなんだよね。

ノベルティソングなのに、「Dr.コトー」の「ド」の字も入れてない。

「医者」なんてワードも無ければ、「孤島」というワードも無い。

それでいてストーリーを網羅している。

ドラマの固有名詞を全て『羅針盤』や『龍』や何かに置き換えているから、聴き手は自分の状況に置き換えて聴くことができる。

失敗を活かせ → 傷跡よ、羅針盤になれ

航跡の白波 → 銀の龍

ここに『作家性』がメチャクチャ出るんだよね。

作家の力量があからさまに出る。

だからノベルティは面白いんだよ。

僕はノベルティ絵本を作りたいね。

「それを、そう表現するかぁー」と驚かせたい。

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